生成AIを武器に、有害生物管理の現場に革新を──現場技術者の「ChatGPT活用実験記」その1

有害生物管理という仕事に就いて十数年。ネズミ、害虫、鳥類……人の暮らしや産業に害をもたらす生き物たちと、日々静かな戦いを繰り広げています。建物内の施工から農業現場での対応まで、多種多様なフィールドがあり、知識や技術のアップデートも欠かせません。

そんな中、私は今、ひとつの“実験”を始めています。
それは、「ChatGPTを使って、世界中の有害生物管理事例をかき集め、仕事に落とし込んでいく」という試みです。情報収集の方法として、生成AIを本気でツール化できるか?という、自分なりの研究でもあります。

現場には、まだまだ情報が足りない

まず前提として、有害生物管理の技術は日進月歩で進化しています。新しい薬剤やトラップの登場、生態学的知見の更新、気候変動に伴う分布の変化、法規制の見直し……。一昔前のノウハウでは、もう通用しない場面が増えてきました。

しかしながら、私たち現場技術者にとって、こうした最新情報をキャッチするのは意外に難しいのです。もちろん、社内にも共有される情報はあります。メーカー主催の勉強会や専門誌の記事、行政からの通達などもあります。

けれども、それらの情報は多くが国内に限定されていて、海外で起きている事例や異なるアプローチにはなかなか触れられません。英語の論文を一つ一つ読み込む時間も、正直言ってありません。

そこで私は、ChatGPTという“知識の地平線”にアクセスできるツールに注目したのです。

ChatGPTを情報収集のパートナーにする

ChatGPTは、世界中の公開された文書、論文、技術資料、ニュース記事などを学習している生成AIです。私が求めるのは、海外の現場でどんな防除法が試されているか、またそれがなぜ効果を上げたか、という実践的な情報です。

たとえば、「食品工場におけるクマネズミ対策の海外事例を教えて」と質問してみると、いくつかの国や施設で試された物理的・化学的・生態的な防除手法を整理してくれます。具体的な事例として、どのようなエサ制御が効果的だったのか、トラップの設置パターンや頻度、忌避剤の選定理由など、現場に落とし込みやすい要素も含んでいます。

もちろん、すべてが正しいとは限らないので、出力内容は必ず自分で精査します。しかし、従来では調べるのに数時間かかっていたリサーチを、わずか数分でざっくりと俯瞰できるのは非常に大きい。
特に「海外の新しい手法を探る」「自分の仮説が他地域でどう評価されているかを確かめる」など、アイデアの源泉として非常に有効です。

実際の仕事にどう活かしているか

AIから得た情報は、そのまま現場で使うわけではありません。むしろそこからが腕の見せ所です。私は以下のようなプロセスで、AIを「使える情報源」にしています。

  1. ChatGPTに広く問う
     → 様々な事例や観点を引き出す
  2. その中から現実的に応用可能なアイデアを抽出
     → 予算、時間、環境、法規制などに合うものを選ぶ
  3. 既存の技術と組み合わせて試験的に導入
     → 小規模テストやパイロット施工を実施
  4. 結果を記録し、再度AIにフィードバック
     → 「このやり方で○○だったが、改善点は?」と聞く
  5. 改善案を次の現場へ展開
     → 仮説検証を繰り返す

つまり、ChatGPTは“実験ノートの相棒”として、技術のブラッシュアップに貢献しています。

ChatGPTは、現場技術者の新しい相棒になりうる

私がこの実験を通して感じているのは、「AIは現場の知恵を増幅させる触媒になりうる」ということです。
AIがすべてを代替することはありません。最終判断を下すのは、現場の人間です。でも、意思決定のスピードや選択肢の広がり方は、これまでの比ではありません。

特に「人に聞きにくい」「前例がない」と感じていた問題に、ChatGPTはヒントをくれることが多いです。
海外事例、関連法規、専門文献、工学的アイデア……どれも“たたき台”として優秀です。そして、何よりありがたいのは、疲れを知らずに、いつでも質問に応じてくれるところです。

最後に──情報は、取りにいく時代へ

私たちのような技術系の仕事では、「目の前の困りごとにどう対応するか」が日々問われます。知識や経験は、もちろん大切です。でも、それだけで乗り切れない時代になってきています。

だからこそ、私はAIという道具を使いこなし、よりよい現場のあり方を探り続けたいと思っています。情報は、待っているだけではやってきません。自分で取りに行く。そのためのツールとして、ChatGPTは非常に強力な武器になると感じています。

この実験はまだ始まったばかりですが、もし同じように現場での情報収集や技術応用に悩んでいる方がいたら、ぜひ一度、ChatGPTを使ってみてください。きっと、思いもよらないアイデアや視点に出会えるはずです。

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